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投稿時間:01/06/28(Thu) 12:50
投稿者名:Dr.Stinger
Eメール:sata@kdent.net
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タイトル:Re: バイオフィルム

バイオフィルムについて…

近年デンタルプラークをバイヲフィルムとして捉える考えが支持されてます。
最近は液体成分中で浮遊しているよりも、固形基質の表面に付着した
いわゆるバイオフィルムとして生息した方が有利です。

バイオフィルムとは、細菌が増殖する過程で細菌自身の分泌する
菌体外粘液多糖の隠れ家の中で増殖しコロニーを形成した状態をいいます。
また、バイオフィルムは菌を抗体や食細胞から守り、抗生物質の浸透を妨げ
作用しにくくするため、治療を困難にします。

バイオフィルムは歯、小腸、膣、尿路やカテーテルや人工心臓弁の表面に
みられ、強い付着性をもつので剥離は容易でない。
デンタルプラークもこの性格を有すという事です。
プラークは成熟するにつれてプラークの厚みや細菌代謝の結果として
細菌にとって重要な生物学的因子であるpHや酸素分圧、栄養分に偏りが生じてきます。
これによってプラーク中の細菌分布が水平的垂直的に断層化され、
プラーク中での微小環境が作り上げられます。
このような環境が多種多様な物を必要とする微生物の生育を可能とし
均質な環境のもとでは互いに共存できないような複数の菌種の共存を可能にします。
成熟したプラークでは好気的な環境であるにもかかわらず、
多くの偏性嫌気性菌が存在している理由でもあります。

プラークが蓄積して24〜48時間経過すると、プラークに歯質隣接面付近の
酸素分圧が低下し偏性嫌気性菌の構成比率が上昇してきます。
さらに2〜3週間に渡りプラークが熟成を続ければ「熟成した共同体」が
確立されるようになり厚さは50〜100μmに達します。
咀嚼や唾液の影響が及ばない歯冠部、小窩裂溝などではさらにプラークの成熟度は増す傾向になります。

バイオフィルム内は粘着性の高いマトリックスで強固に構築されており
外界からの刺激に抵抗性を示します。強力な殺菌作用を呈する
クロルヘキシジンは細菌が溶液中で浮遊している状態であれば
程んどのプラーク細菌に効果を発揮するが
成熟したバイオフィルムにおいては全く殺菌効果を示しません。
界面活性剤や免疫細胞による食作用、抗生物質療法に対しても強い抵抗性を示します。
ある種のバイオフィルムに関しては内部チャネルの存在が示唆されており
これらは、バイオフィルム全体においてネットワークを張り巡らせており
水路の役目を果たしていようです。このチャネル内では倍をフィルムの液体成分が
毛細管現象により人間の血管の作用と類似してバイオフィルム内及び
外界とを結びイオン交換、栄養素の供給、老廃物の運搬をしていると考えられます。
バイオフィルム内の細菌の代謝速度は非常に遅くなっており生育も制限されています。
この状況下では細菌もわずかな栄養素しか必要でなく、不要な老廃物も
ごく少量しか産生されません。
無栄養価の凍結乾燥状態でも生存していく細菌の性質を考えれば
このチャネルの働きだけで十分なコミュニティーが形成されると
思われます。

まだデンタルプラークをバイオフィルムとして捉えた研究は発展途上ですが
これらの解明によりプラークのバイオメカニズムは明らかにされていくと思います。


最後に、勉強していくうちにこのように専門的なことに関する疑問は
これからも数多く出てくると思いますが、黒猫先生が言われてるように
それの答えを上手に見つける方法を知るのも勉強のひとつだと私は考えます。
この講義をされた先生に直接質問をしてみるのも良いと思いますし、
その方法なら先生が何故その話をしたかの、意図がわかると思います。
勿論ここで質問して頂いても結構ですが、このような専門医学的な質問と
回答は、多くの方が望んでいるわけではありません。

ここでやり取りされた話を多くの人に共有して貰う事が
ここの掲示板の目的のひとつである事もご理解ください。


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- バイオフィルム - 歯科専学生 01/06/21(Thu) 00:13 No.406

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